ランニングコーチの青山剛です。
この連載は、テーマである「健康的に長く続けられる正しいランニング」のための、「走れるカラダ作り編」と「走れるココロ作り編」の2部構成です。
今回は「走れるココロ作り編」の第3弾です。このコラムをご覧頂いているほとんどの方に、心当たりがあるようなお話しをしたいと思います。
ランニング練習や大会を走る上で、多くの方が余計なことを考え過ぎて、それがマイナスになってしまい、トレーニング効率や大会でのパフォーマンスが下がっている場合があります。
それは何かというと「自分のコントロールできないことにエネルギーを使っている」ということです。これがいわゆるストレスとなり、緊張を生み、マイナスに働いてしまうのです。
例えば、トレーニングの場合、
A:「仕事が残業になったら、予定の練習ができないなあ」
B:「寒くて、身体が温まらず怪我をしそうだなあ」
C:「雨が降りそうなので、気分が乗らないなあ」
など、日々トレーニングの上でもストレスを感じたことがあるはずです。
ここで、スポーツ心理学では「鉄板」といわれる方法で解決してみます。それは「自分のコントロールできないことは考えから削除し、コントロールできることに集中する」ということです。
Aの場合、会社員の方であれば、自分の希望しない急な残業はよくあることだと思います。でもこれは、ほぼ自分でコントロールできないことです。それを悶々とストレスに感じてしまうのは無意味なので、考えから削除。仕事後の練習ができない可能性があるのなら、一つの案として、残業を想定して、朝に練習を終わらせてしまいましょう。
・コントロールできないこと⇒残業⇒考えから削除
・コントロールできること⇒練習をするタイミングを変える⇒集中してそれに取り組む
こういった思考を日々行うことで、本来集中すべき、そしてエネルギーを使うべきことに「全部」持っていけるので、パフォーマンスがアップし、ストレスも軽減します。
B、Cのような「天候」の場合、まさに自分でコントロールできることではないので、あれこれ考えることは削除。その代わりに、寒くなりそうだったり、雨が降りそうだったら、自分がコントロールできること⇒ウォーミングアップをしっかり行う、ウェアを調整することに集中すれば良いだけです。
もっと言えば、週間天気などいくらでも情報を入手できるわけですから、その予報を踏まえ、あらかじめそれを想定したトレーニングプランの作成に集中すればより良いわけです。
それは大会当日にも同じことが言え、ウェアなどの準備をしっかり行えばいいだけです。
ランニング大会の場合でも、以下のようなことでストレスや緊張が生まれていませんか?
D:「スタート時の混雑で、予定ペースで走れなかったらどうしよう」
E:「同じ年代の選手が多く出るらしいので、年代別順位が落ちそうだなあ」
F:「坂道が多く、いつも以上に疲れそうだなあ」
D~Fは、まさに自分がコントロールできないことをあれこれ考えているパターンです。
・コントロールできないこと⇒スタート時の混雑
・コントロールできること⇒エントリーの段階で、その混雑具合を確認し、他の大会にエントリーする。同じスタートブロックでもなるべく前方に並び、少しでも混雑を避ける。スタートしてしばらくは、ウォーミングアップだと思って、のんびり走る。
と、なります。
同じ年代の選手が何人出るかも自分でコントロールできることではないので、考えから削除です。本当に年代別順位を上げたいときは、他の選手のデータを分析するなどして対策を立てるのですが、一般の方の場合、そんなことをしていたら、大会前に疲れ果ててしまうだけです。従って自分の走りに集中すること、それがベストです。
これがランニングではなく対人スポーツなどの場合、相手が自分より強いとか弱いとか、また調子が良さそうなど、自分でコントロールできないことですから、考えから削除。自分がコントロールできることは、その相手の特徴を事前に十分に研究して、その対策を練ることだけです。
Fの坂道も同様です。目標大会で坂道があっても、それをなくすことはできません。だとしたら、練習で坂道対策をしっかりすることに集中し、大会でもその坂道の克服に集中するしかありません。
ランニングやスポーツに限らず、この方法は生活していく上でのすべてのことに使えます。例えば、今ストレスや不安に感じていることを全部紙に書き出してみてください。それを自分のコントロールできることとできないことの二つに分けるのです。
そうしてみると、ストレスや不安に感じていることの大半は、自分でコントロールできないことだと気づくはずです。コントロールできないことは考えから削除し、コントロールできることに集中して取り組むしかないのです。
トレーニングも何事も、しっかりと事前に「想定」して準備を進めれば、自分がコントロールできることは増えてきます。ランニングを健康で長く正しく続けるためにも、コントロールできないことをあれこれ考えず、コントロールできることに集中して楽しみましょう!
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文・写真提供:リズムアンバサダー 青山剛
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