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睡眠薬の副作用で「ボケる」のかに関する睡眠専門医としての見解

睡眠薬の副作用で「ボケる」のかに関する睡眠専門医としての見解

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睡眠薬の副作用で「ボケる」のかに関する睡眠専門医としての見解

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こんにちは。精神科医の松井健太郎です。

みなさん、不眠症という言葉は聞いたことありますよね。
「夜なかなか寝付けない」、「寝ている途中に何度も目が覚めてしまって苦しい」、「ぐっすり眠った感じがない」など、不眠症の方は睡眠に関する様々な悩みを抱えています。
良い睡眠が取れず、翌日具合が悪い、それが毎日のように続くのが不眠症です。

不眠症の患者さんには、生活習慣に問題がないか確認して睡眠衛生指導をするのですが、それだけではなかなか症状が改善しないことも少なくありません。
そういう場合には睡眠薬(睡眠導入剤とも呼ばれます)を用いた治療をするのも一つの手です。

僕の担当している患者さんでも睡眠薬を定期的に使用している方がたくさんいます。
ときどき聞かれるんです。「先生、睡眠薬を飲んでるとボケるって言われて心配なんですが・・・」

これは当然の心配だと思います。誰しも認知症にはなりたくないですもんね。
というわけで、今回は睡眠薬の服用と認知症との関係について解説しようと思います。

睡眠薬の服用には抵抗がある


そもそも睡眠薬とはどんな薬なのでしょうか。
睡眠薬の多くは、中枢神経を抑制するGABA(γ-アミノ酪酸)系の作用を増強することで催眠作用をもたらします。

睡眠薬は止めづらい、という意見がありますが、これはGABA系に作用する睡眠薬ではその通りです。
連日睡眠薬を服用して数ヶ月以上経つと、体サイド的には薬が体内に取り込まれるのが当たり前、という状況になってきます。そこで急に服薬を中断すると、不眠がぶり返したり、なんだか落ち着かない、気持ちが悪い、など様々な症状が出現したりします。離脱症状です。

これに関しては昔から問題視されていまして、睡眠薬は長期間連用しないよう推奨されているのですが、不眠症の方では、睡眠薬服用が長期間に渡ってしまうことが少なくありません。
これも脳に働く薬は怖い、というイメージにつながりますよね。

睡眠薬は催眠作用とともに短期的ではありますが認知機能の低下がもたらされます。飲んだら眠たくなるわけですから、当たり前ではあるんですが。
長期的な認知機能への影響が懸念されるのも、さもありなんといったところです。

「睡眠薬を飲むとボケる」、はホント?


睡眠薬の服用と認知機能の低下との関連については多くの研究により検証され、睡眠薬の服用が認知症のリスクと考えられてきました(1)。また長期間、高用量、長時間作用型の薬剤の使用が認知機能の低下と関連するようです(2)。

一方で、認知症の前駆症状として出現した不眠に対し、睡眠薬が投与されている可能性については統制されていませんでした。
つまり、認知症が始まりかけている人に睡眠薬が投与されがちであった可能性があったわけです。

近年、このような初期症状バイアスに注目した研究がなされ、睡眠薬が認知症に及ぼす影響が否定されてきています(3, 4)。
そのため、睡眠薬の認知機能への影響については結論が出ていない状況となってしまいました。
ふりだしに戻ってしまった感じです。

他方、こんな研究報告があります。
認知症を発症していない高齢者を、睡眠が分断している人と、睡眠が分断していない人とに分けて6年間経過を追ったところ、睡眠が分断している人では認知症発症リスク、認知機能の低下リスクが高かったんです(5)。

ですから、不眠の悩みを放っておくのも認知機能にはよくなさそうです。

まとめ


・睡眠薬服用と認知症の関係については結論が出ていない
・高用量・多剤を長期間続けるのは良くないと考えられる
・ただし睡眠が分断した状態そのものが認知機能低下のリスク

以上を踏まえて、認知症が心配な患者さんには、
「睡眠薬使ってよく眠れるほうが、眠れないのを我慢して過ごすより良いです。無理にやめようとしなくて大丈夫」
と説明しています。

それと、睡眠薬を飲むにしても少量であればおそらくリスクがより低いでしょう。
なるべく少ない薬で良い治療成果を出すのが腕の見せどころ。そこは睡眠障害治療を専門とする医師の使命であると思っております。

1. Billioti de Gage S, Pariente A, Bégaud B. Is there really a link between benzodiazepine use and the risk of dementia? Expert opinion on drug safety. 2015;14(5):733-47.
2. Wu C-S, Wang S-C, Chang IS, Lin K-M. The association between dementia and long-term use of benzodiazepine in the elderly: nested case–control study using claims data. The American journal of geriatric psychiatry. 2009;17(7):614-20.
3. Imfeld P, Bodmer M, Jick SS, Meier CR. Benzodiazepine Use and Risk of Developing Alzheimer’s Disease or Vascular Dementia: A Case–Control Analysis. Drug safety. 2015;38(10):909-19.
4. Gray SL, Dublin S, Yu O, Walker R, Anderson M, Hubbard RA, et al. Benzodiazepine use and risk of incident dementia or cognitive decline: prospective population based study. bmj. 2016;352:i90.
5. Lim ASP, Kowgier M, Yu L, Buchman AS, Bennett DA. Sleep fragmentation and the risk of incident Alzheimer’s disease and cognitive decline in older persons. Sleep. 2013;36(7):1027.

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